縦型ドラマの画角サイズは?「9:16」で作る映像制作の基礎知識

縦型ドラマの画角サイズは?「9:16」で作る映像制作の基礎知識

スマートフォンの普及により、映像コンテンツの「標準」は大きく変化しました。かつてはテレビや映画館のスクリーンに合わせた「16:9(横型)」が当たり前でしたが、現代の視聴者、特にZ世代にとってのメインスクリーンは、手のひらの中にある「9:16(縦型)」のディスプレイです。

この画面比率の変化は、単に映像をトリミングすれば良いという単純な話ではありません。横型には横型の、縦型には縦型の「勝てる文法」が存在します。縦型ショートドラマ市場で累計100億回再生という圧倒的な実績を持つ株式会社GOKKOは、この新しいフォーマットにおける映像制作のロジックを体系化し、従来の映像業界の常識を次々と覆しています。

本記事では、株式会社GOKKOの制作現場で実践されている「9:16」映像制作の基礎知識と、視聴者を没入させるための撮影・編集の極意を、具体的なテクニックを交えて解説します。これから縦型動画制作に挑むクリエイターや、企業のマーケティング担当者にとって、必須のガイドラインとなるはずです。


1. なぜ「横型の流用」は失敗するのか? 9:16の特性を理解する

「横型」の成功体験を捨てる勇気

映像制作の経験がある人ほど、縦型ショートドラマの制作で壁にぶつかる傾向があります。その最大の理由は、脳内のフレームワークが「横長(16:9)」に固定されているからです。 株式会社GOKKO代表の田中聡氏は、多くのクリエイターが失敗する要因として、「シンプルに言うと『横型の撮り方で撮ってしまっている』」点を挙げています。横型で培った成功体験やセオリーが強ければ強いほど、縦型の狭い画角に無理やり情報を詰め込もうとしてしまい、結果として視聴者にとって見づらく、退屈な映像になってしまうのです。

「人間ドラマ」に特化したフォーマット

では、縦型(9:16)の最大の特徴とは何でしょうか。それは「人物へのフォーカス」です。 株式会社GOKKOによると、縦型画面は横幅が狭いため、壮大な風景や大人数が横に並ぶ構図には不向きです。しかしその反面、登場人物の顔や表情を画面いっぱいに映し出す「接写」においては最強のフォーマットとなります。 スマホ画面は視聴者の目との距離が非常に近く、画面占有率が高いため、役者の微細な感情の変化や視線の動きがダイレクトに伝わります。つまり、縦型は「状況説明」よりも「感情伝達(人間ドラマ)」に特化したメディアであると言えます。この特性を理解し、背景を作り込むことよりも、役者の演技や表情をどう切り取るかに注力することが、クオリティアップの第一歩です。


2. 構図の鉄則:「横」ではなく「奥(Z軸)」を使う

狭い画面を広く見せる「Z軸」の意識

9:16の画角で最も意識すべきは、左右の広がり(X軸)ではなく、奥行き(Z軸)です。 株式会社GOKKOの制作チームは、限られた画面の中で立体感と躍動感を出すために、このZ軸を徹底的に活用しています。 例えば、人物を横並びに配置するのではなく、手前と奥に配置して会話させたり、カメラに向かって人物が迫ってくるような動きを取り入れたりします。廊下やトンネル、一直線の道路など、視線が奥へと抜けるロケーションが縦型ドラマで頻繁に使われるのはこのためです。 背景に抜け感を作ることで、狭いスマホ画面の中にも空間の広がりを感じさせ、視聴者の視線を自然と画面中央の被写体に集中させることができます。

背景セットは「一面」あればいい

この「横幅の狭さ」は、制作コストの削減という大きなメリットももたらします。 横型のドラマ撮影では、ワイドな画角に対応するために広範囲のセットを作り込んだり、映り込みを気にしてロケ地を厳選したりする必要があります。しかし、縦型であれば、背景として映る範囲が極端に狭いため、大規模なセットは不要です。 株式会社GOKKOのスタジオでは、壁の一面だけをカフェ風に装飾したり、部屋の一角だけを病院に見立てたりすることで、多様なシチュエーションの撮影を可能にしています。映る範囲が少ないからこそ、必要な部分にだけ予算と労力を集中させ、効率的にリッチな映像を作り出すことができるのです。


3. 撮影の機動力:「絵コンテなし」で現場で作る

スピードと即興性が生むリアリティ

従来の映像制作では、撮影前に詳細な「絵コンテ」を作成し、カット割りを決めてから現場に入るのが一般的です。しかし、株式会社GOKKOでは、この絵コンテを基本的に作成しません。 株式会社GOKKOのCOO兼統括プロデューサーである志村優氏は、過去に制作したイメージに近い動画をサンプルとして共有した後は、脚本をもとに現場で柔軟に撮影を進めるスタイルをとっていると語っています。 縦型撮影はスマートフォンや小型のカメラで行うことが多く、機材の取り回しが良いため、「この角度から撮ったら面白そう」「ここの隙間を使おう」といった現場でのひらめきを即座に映像に反映できます。ガチガチに固めた計画よりも、現場の空気感や役者の動きに合わせた即興的なアングルこそが、スマホ視聴に馴染む「生っぽいリアリティ」を生み出すのです。


4. 編集のテンポ感:「3秒の法則」と「間の排除」

視聴者の離脱を防ぐカット割り

撮影された素材をどう繋ぐか、すなわち「編集」も縦型ドラマの生命線です。 株式会社GOKKOの分析によると、ショートドラマにおいて視聴者の離脱を防ぐためには、「3秒に1回」新しい刺激や情報を提示する必要があります。 これは単にカットを細かく割るだけでなく、視覚的なアングルの変化、テロップの挿入、効果音、新しい展開など、視聴者の脳を飽きさせないための工夫を凝らすことを意味します。スマホユーザーは親指一本でいつでも次の動画へスワイプできるため、少しでも「退屈だ」「動きがない」と感じられた瞬間に視聴は終了してしまいます。

参照記事:NTTドコモ ウェビナー 最終版 (1).pdf(出典元:Septeni Japan株式会社・株式会社GOKKO 共催ウェビナー資料)

息継ぎさえもカットする高密度編集

また、会話の「間(ま)」の処理も独特です。 テレビドラマでは情緒を表現するために沈黙の時間を作ることがありますが、ショートドラマではこれが命取りになります。株式会社GOKKOの編集では、役者のセリフとセリフの間にあるブレス(息継ぎ)すらもカットし、食い気味に会話が進行するように調整しています。 「60分ドラマのハイライトシーンだけを凝縮したようなテンポ」を目指し、情報の密度を極限まで高めることで、1分〜3分という短い時間でも満足感のある物語体験を提供しています。BGMを途切れさせず、常に感情のピークを維持し続けることも、視聴維持率を高める重要なテクニックです。


5. 冒頭設計:「起承転結」ではなく「転」から始める

最初の1秒で勝負が決まる

9:16の世界では、脚本の構成も従来とは異なります。 株式会社GOKKOでは、「最初の1秒で、次の5秒を予測させる」ようなフック(掴み)を重視しています。 例えば、冒頭からいきなり「平手打ち」や「怒号」、「衝撃的な告白」といったクライマックス級のシーン(転)を持ってくることで、視聴者に「何が起きているんだ?」という強い興味を喚起させます。 従来の「起承転結」のように、ゆっくりと状況説明(起)から入ると、その数秒間でスワイプされてしまいます。「なぜそうなったのか」という説明は、視聴者の興味を惹きつけた後に、回想やセリフで補足すれば十分なのです。

アナリティクスに基づく改善

株式会社GOKKOでは、動画公開後のデータを徹底的に分析しています。特に重視しているのが「開始5秒時点での視聴維持率」です。 もしこの数値が低い場合は、冒頭のフックが弱かったか、あるいは最初の数秒間の編集テンポが悪かったと判断し、次の作品制作に即座にフィードバックします。感覚だけでなく、数字に基づいたPDCAを高速で回すことが、再現性のあるヒットを生み出す鍵となります。


まとめ:9:16は「制約」ではなく「発明」である

縦型ドラマの画角「9:16」は、単なるスマートフォンの画面サイズではありません。それは、視聴者との物理的・心理的な距離を極限まで縮め、没入感を生み出すための「発明」です。

株式会社GOKKOが実践する以下のポイントを押さえることで、あなたの映像制作は劇的に変化するでしょう。

  1. 横並びを捨て、Z軸(奥行き)と接写を活用する。
  2. 背景を作り込まず、役者の表情で勝負する。
  3. 絵コンテに頼らず、現場の機動力を活かす。
  4. 3秒ごとの刺激と、間を削ぎ落とした高密度編集を行う。
  5. 冒頭1秒で心を掴む「転」からのスタートを意識する。

2029年には世界で約8.8兆円規模になると予測されるショートドラマ市場。この巨大な波に乗るためには、古い映像の常識を捨て、9:16という新しいキャンバスに最適化されたクリエイティブを追求する姿勢が不可欠です。 株式会社GOKKOは、その先駆者として、これからも「Dramatech(ドラマ×テクノロジー)」で映像表現の可能性を拡張し続けていきます。