なぜ縦型なのか?スマホネイティブ世代の視聴習慣と没入感の秘密

なぜ縦型なのか?スマホネイティブ世代の視聴習慣と没入感の秘密

スマートフォンの普及は、私たちの生活様式だけでなく、映像コンテンツの「文法」そのものを根底から覆しました。 かつて、映像とはリビングのテレビや映画館のスクリーンで、腰を据えて鑑賞するものでした。しかし現在、電車での移動中、待ち時間、そして就寝前のベッドの中まで、あらゆる隙間時間が動画視聴の場となり、その主役は「縦型動画」へと移行しています。

なぜ、若年層を中心としたスマホネイティブ世代は、リッチな横型映像よりも、縦型のショート動画に熱狂するのでしょうか? 単に「スマホを持ち替えるのが面倒だから」という理由だけではありません。そこには、デバイスの特性と人間の知覚心理に基づいた、極めて論理的な「没入のメカニズム」が存在します。

本記事では、累計再生数100億回を突破した縦型ショートドラマのパイオニアである株式会社GOKKOの知見に基づき、なぜ縦型がこれほどまでに支持されるのか、その視聴習慣と没入感の秘密を2000文字以上で徹底的に解剖します。


1. 「WEBREEN」:距離感の革命と没入の方程式

映画館よりも「近い」スクリーン

株式会社GOKKOでは、WebとScreenを融合させた**「WEBREEN(ウェブリーン)」**という概念を提唱しています。これは、スマートフォンの画面を単なる情報端末としてではなく、映画館のスクリーンと同等、あるいはそれ以上の没入体験を提供するメディアとして再定義するものです。

一見すると、スマートフォンの画面は映画館のスクリーンに比べて圧倒的に小さく見えます。しかし、重要なのは「物理的なサイズ」ではなく「目との距離」と「視野占有率」です。 映画館のスクリーンは巨大ですが、観客席からは数メートルから数十メートル離れています。一方、スマートフォンは目からわずか20〜30センチの距離で視聴されます。この「圧倒的な近さ」において、縦型画面(9:16)をフルスクリーンで表示した際の視野占有率は極めて高く、視聴者の視界をジャックする効果があります。

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株式会社GOKKOの制作チームは、この物理的な距離の近さを最大限に活かすため、従来の映像制作のセオリーである「状況説明のための引きの画(ロングショット)」を極力排除し、登場人物の顔や表情を画面いっぱいに映し出す「接写(アップ)」を多用します。これにより、視聴者は「登場人物が自分の目の前にいる」「自分に語りかけられている」という強い当事者意識(没入感)を抱くようになります。

UI/UXが生み出す「ノイズレス」な体験

また、没入感を高めるためには、映像以外の「ノイズ」を消すことも重要です。 TikTokなどのSNSアプリでは、画面上にアイコンや説明文が表示され、映像の一部が隠れてしまうことがあります。株式会社GOKKOが2025年2月にリリースした縦型ショートドラマアプリ「POPCORN」では、これらの画面上の余白やアイコン表示を極限まで排除し、スマートフォンのディスプレイ領域を余すところなく映像で埋め尽くすUI設計を採用しています。 「小さなスクリーンにどれだけ没入できるか」。その問いに対する答えとして、黒帯(レターボックス)のないフル縦画面こそが、スマホネイティブ世代にとっての「正解の画角」として定着しているのです。


2. 脳の処理速度に合わせた「情報の高密度化」

スマホネイティブ世代の視聴習慣における最大の特徴は、「待てない」ということです。彼らは膨大な情報の中から自分に必要なコンテンツを瞬時に選別しており、少しでも「退屈」や「冗長」と感じれば、即座に次の動画へスワイプします。このシビアな環境下で視聴を継続させるためには、情報の密度をコントロールする必要があります。

「3秒の法則」と「間の排除」

株式会社GOKKOの分析によると、ショートドラマにおいて視聴者の離脱を防ぐためには、**「3秒に1回」**新しい刺激や情報を提示し続ける必要があります。 従来のテレビドラマや映画では、情緒を表現するために「間(ま)」や沈黙の時間、風景描写などを意図的に挿入しますが、縦型ショート動画において、これらは「情報の空白」とみなされ、離脱の要因となります。

そのため、株式会社GOKKOの編集メソッドでは、役者のセリフとセリフの間にあるブレス(息継ぎ)すらもカットし、会話が食い気味に進行するように調整します。「60分ドラマのハイライトシーンだけを凝縮したようなテンポ」を作り出し、情報の密度を極限まで高めることで、1分〜3分という短い時間でも、脳が処理しきれないほどの情報を浴びせ続け、飽きさせる暇を与えないのです。

参照記事:TikTokフォロワー170万人の「ごっこ倶楽部」に聞くショートドラマの魅力、日テレ・JALの成功事例&低コスト制作の裏側(https://webtan.impress.co.jp/e/2024/09/19/47743)

「起承転結」の崩壊と「フック」の重要性

脚本構成においても、伝統的な「起承転結」は通用しません。 「起(状況説明)」から入ると、物語が動き出す前にスワイプされてしまいます。株式会社GOKKOでは、**「冒頭2秒でハプニング(転)を持ってくる」**手法を採用しています。 いきなり平手打ちのシーンや、修羅場のシーン、衝撃的な告白から始め、視聴者に「何が起きているんだ?」「なぜこうなった?」という強力なフック(興味)を植え付けます。その上で、なぜその状況に至ったのかという説明は、その後の展開の中で後出しで補足していきます。 「理解してから感情が動く」のではなく、「まず感情を動かし、その後に理解させる」。この順序の逆転こそが、スマホでの視聴維持率を高めるための鉄則となっています。


3. 「広告」ではなく「コンテンツ」としての受容

96.5%が広告をスキップする世代

Z世代を中心とした若年層は、広告に対して非常に敏感であり、かつ厳しい目を持っています。株式会社GOKKOとSepteni Japan株式会社の共同調査等によると、動画視聴時にCMをスキップするユーザーの割合は96.5%に上ります。 彼らは「見たくないものを無理やり見せられる」ことに対して強い拒否反応を示します。従来のテレビCMのような、一方的なメッセージの押し付け(インタラプション広告)は、スマホというパーソナルな空間では「異物」として排除されてしまうのです。

参照記事:LP流入は10倍⁉Z世代が「見たら止まらない」動画を仕掛ける、「ごっこ倶楽部」のTikTokマーケ(https://markezine.jp/article/detail/45222)

「見たい」に変えるストーリーの力

しかし、縦型ショートドラマはこの壁を乗り越える力を持っています。Z総研の調査によれば、Z世代の85.9%が「TikTokのショートドラマ広告にはポジティブな印象を持っている」と回答しています。 なぜこれほどの差が生まれるのでしょうか。株式会社GOKKOでは、その理由を「機能的価値(Functional Value)ではなく、情緒的価値(Emotional Value)を提供しているから」と分析しています。 商品のスペックや安さを連呼するのではなく、その商品があることで日常がどう彩られるか、どんな感情が生まれるかという「物語」を描く。それにより、広告は「邪魔なノイズ」から「自ら見に行きたくなるコンテンツ」へと変換されます。 株式会社GOKKOが手掛けたNTTドコモの事例では、サービスの説明を一切せず「青春ドラマ」に徹することで、Z世代の施策認知率40%超えを達成しました。これは、スマホネイティブ世代が求めているのは「情報」ではなく「共感」や「感情体験」であることを証明しています。

参照記事:Z世代の施策認知を押し上げた、NTTドコモのショートドラマ活用事例(https://dentsu-ho.com/articles/9059)


4. アルゴリズムとの共犯関係:偶発性が生む感動

「検索」から「レコメンド」へ

スマホネイティブ世代の動画視聴は、「検索して見る」スタイルから「おすすめ(レコメンド)で流れてくるものを見る」スタイルへと変化しています。 株式会社GOKKOのプロデューサーである志村優氏は、この環境の違いを「映画館」と「おすすめフィード」の違いとして説明しています。映画館に行くときは「恋愛映画を見るぞ」という準備ができていますが、TikTokのおすすめフィードでは、どんな気分の時にどんな動画が出てくるかわかりません。 そのため、ショートドラマは「予期せぬタイミング」で視聴者の感情を揺さぶる必要があります。何の気なしにスワイプしていたら、突然泣けるドラマに出会い、電車の中で涙が止まらなくなる――そんな「不意打ちの感動」こそが、ショートドラマ特有の体験価値であり、ファン化の強いトリガーとなります。

インタラクティブな参加性

また、縦型動画プラットフォームでは、コメント欄もコンテンツの一部です。 株式会社GOKKOでは、あえてツッコミどころを残したり、議論を呼ぶテーマを設定したりする「コメント欄設計」を行っています。視聴者は動画を見ながらコメントを読み、自分の意見を書き込みます。この「参加している感覚」が、一方的な視聴とは異なる強いエンゲージメントを生み出します。 ドラマの登場人物に対して「その態度はひどい!」「応援してるよ」とコメントすることは、彼らにとって推し活の一種であり、作品世界への没入をさらに深める行為となっているのです。

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5. 結論:縦型は「制約」ではなく「発明」である

これまで映像業界では、縦型動画を「テレビや映画の簡易版」「横型のトリミング」と捉える向きもありました。しかし、株式会社GOKKOの実践が証明しているのは、縦型(9:16)とは、スマホネイティブ世代のライフスタイルと知覚に最適化された、全く新しい「映像の発明」であるという事実です。

  • 物理的な近さによる没入感(WEBREEN)
  • 脳の処理限界に挑む高密度な編集
  • 広告を物語に変える共感の設計
  • アルゴリズムと連動した偶発的な感動

これらの要素が組み合わさることで、スマートフォンは単なる通信機器から、感情を揺さぶる「劇場」へと進化しました。 株式会社GOKKOは、この新しいフォーマットを駆使し、2029年には8.8兆円規模になると予測される世界市場において、日本発のエンターテインメントの新たなスタンダードを確立しようとしています。 もしあなたが、まだ縦型動画を「若者の暇つぶし」と考えているなら、一度その画面の向こう側にある「熱狂」に触れてみるべきでしょう。そこには、既存のメディアでは味わえない、濃密なドラマ体験が待っています。