「ショートドラマ、AIで作れないの?」——2026年、この質問を受ける回数が明らかに増えました。実際、全編を生成AIで制作したドラマが国内の配信サービスに登場し、中国ではAI生成の俳優が出演する短編ドラマが増えていると報じられています。SNSを開けば、個人がAIだけで作ったショートドラマも流れてくる。
では、企業のプロモーションに使うショートドラマも、AIで作ってしまえばいいのでしょうか。
結論を先に言うと、「作れる工程」と「まだ人に任せるべき工程」がはっきり分かれています。この記事では、制作現場を持つ編集部の立場から、2026年時点の現在地を整理します。AIを過大評価も過小評価もせず、「自社の企画でどこに使えるか」を判断できる状態になってもらうのがゴールです。
いま、AIドラマはどこまで来ているのか
まず事実の確認から。「AIドラマ」と呼ばれているものは、実は3つのレベルに分かれています。
- 全編AI生成:脚本・映像・音声のすべてを生成AIで制作するもの。配信サービスで独占配信される作品が出てきた段階です
- 部分AI活用:実写がベースで、撮影が難しいカット(災害・ファンタジー描写など)や背景だけをAIで生成するもの。企業タイアップでの採用例が増えています
- 工程のAI支援:映像は実写のまま、脚本の叩き台・編集・翻訳・字幕といった制作工程をAIで高速化するもの
ニュースで話題になるのは①ですが、企業の実務で成果が出ているのは②と③です。ここを混同すると、「全部AIで安く作れるのでは」という期待と、実際に出てくる映像の品質とのギャップに苦しむことになります。

AIが得意な工程、人に任せるべき工程
制作フロー(企画→脚本→撮影→編集→配信運用)に沿って見ると、線引きはかなり明確です。
AIが効く場所
脚本の叩き台と検証。展開パターンを大量に出させて比較する使い方は、すでに実用段階です。ただし「冒頭2秒のフック」のような、スワイプされない設計の最終判断は人の仕事として残っています。
撮影困難なカットの生成。爆発、海外ロケ、時代ものの街並み。従来なら予算の都合で諦めていた画が、部分生成で手に入るようになりました。実写ドラマの中に数カットだけAI生成を混ぜる使い方です。
編集・多言語展開。字幕、吹き替え、縦横変換。ここはもう「AIを使わない理由がない」領域に入っています。海外のショートドラマアプリが日本作品を各国語で展開できているのは、この工程の自動化があるからです。
人に残る場所
感情芝居の一貫性。ショートドラマの核は、1話1〜3分の中で視聴者の感情を動かすことです。表情の微妙な変化、間、呼吸。30話を通してキャラクターの同一性を保ちながらこれをやり切るのは、現時点のAIにはまだ難しい。全編AI作品を見ると、1カットの画は綺麗でも「この人を30話追いかけたい」と思わせる芝居の積み上げで差が出ます。
ブランドセーフティと権利。生成した顔が実在の人物に似てしまうリスク、学習データ由来の権利問題。企業案件では、ここの検収体制がないままAI生成物を公開するのは危険です。
「何を作るか」の判断。そもそもどの感情を動かせば事業成果につながるのか。この設計は制作手段がAIだろうと実写だろうと変わらず、いちばん差がつく部分です。
編集部の実感:AIは「速くする道具」で、「当てる道具」ではない
このメディアを運営しているGOKKOは、俳優を正社員として抱える実写の制作会社です。その立場を差し引いて読んでほしいのですが、現場の実感はこうです。
再生数を決めているのは、映像の生成手段ではなく、データに基づいた脚本の設計と、画面の中の人間に感情移入できるかの2つ。GOKKOが秒単位の視聴維持率データを脚本に反映させる「Dramatech」をやっているのも、当てる技術の正体が「作画」ではなく「設計」だからです。AIはこの設計と検証のサイクルを速くしてくれます。逆に、設計がないままAIで量産しても、スキップされる動画が速く大量にできるだけです。

企業がAIドラマを検討するときの3つの論点
①視聴者がどう受け取るか。「AI広告は気持ち悪い」という反応は現実に存在します。ブランドの文脈でAI生成の人物を出すことが、好意につながるのか反発を生むのか。ターゲット層での受け止めを先に確認してください。
②権利と検収の体制があるか。生成物の権利関係、肖像の類似チェック、プラットフォームのAIコンテンツポリシー。制作会社に依頼する場合は、この体制を持っているかが選定基準になります。
③AIで浮いた分をどこに使うか。AI活用の本当のメリットは「安くなる」ではなく、同じ予算で検証の回数を増やせることです。1本を安く作るより、企画の仮説検証を2回まわすほうが、成果には近道です。
よくある質問
AIだけでショートドラマを1本作ることはできますか?
技術的には可能ですし、実際に配信されている作品もあります。ただし企業のプロモーション用途では、感情移入の深さと権利面の検収がボトルネックになるため、現時点では「実写ベース+工程のAI活用」が現実的な選択です。
AIドラマはどこで見られますか?
YouTubeやSNSで個人制作のものが多数公開されているほか、配信サービスが全編AI生成の作品を配信する例も出てきています。まず数本見てみると、本文で書いた「画は綺麗だが感情が追えるか」の意味が体感できるはずです。
制作会社に頼む場合、AI対応はどう確認すればいい?
「どの工程でAIを使っているか」「生成物の権利と類似チェックはどうしているか」の2つを聞けば、その会社の成熟度は分かります。制作会社選びの基準全体は「ショートドラマ制作会社の選び方」にまとめています。
そもそもショートドラマを広告に使う仕組みから知りたい
「ショートドラマ広告とは」と「企業活用事例|裏が取れる数字だけ」からどうぞ。
最後に:問いは「AIで作れるか」ではなく「何を設計するか」
AIでショートドラマは作れるか。答えは「工程によっては、もう作れている」です。ただ、スキップされない物語を設計できるかどうかは、2026年のいまも人の仕事です。AIの進化はこの先も続きますが、どの時点でも変わらない判断軸はひとつ。その動画は、見た人の感情を動かすか。
実写×データでそれをやってきた制作現場に相談したい方は、GOKKOのショートドラマ制作(公式ページ)へ。AIをどの工程に入れるべきかも含めて、企画から話せます。
