なぜ今、WEBTOON(ウェブトゥーン)の実写化ショートドラマが増えているのか?

なぜ今、WEBTOON(ウェブトゥーン)の実写化ショートドラマが増えているのか?

スマートフォンの画面を縦にスクロールしながら、隙間時間に物語を楽しむ。この視聴スタイルは、もはや漫画(WEBTOON)だけの専売特許ではなくなりました。今、エンターテインメント業界で急速に台頭しているのが、WEBTOON原作の「縦型ショートドラマ化」という潮流です。

韓国や中国で先行して爆発的な市場を形成したこのモデルは、2024年から2025年にかけて日本でも本格化し、新たなヒットの方程式として定着しつつあります。なぜ、従来の横型テレビドラマではなく、あえて「縦型ショートドラマ」での実写化が選ばれるのでしょうか?そして、なぜそれがビジネスとして成立するのでしょうか?

本記事では、日本における縦型ショートドラマ市場のパイオニアであり、累計再生数100億回を突破したクリエイター集団「ごっこ倶楽部」を運営する株式会社GOKKOの最新の取り組みや公開情報を基に、WEBTOONとショートドラマが融合する必然性と、その背後にある巨大な経済圏の正体を深掘りします。


1. 8.8兆円市場へ:スマホ特化型エンタメの覇権争い

映像と漫画の境界線が消える「WEBREEN」の世界

まず理解すべきは、ショートドラマ市場自体の圧倒的な成長スピードです。 調査会社のデータによれば、世界のショートドラマ市場規模は2029年には約8.8兆円(556億ドル)に達すると予測されています。これは2024年の市場規模と比較して約10倍の拡大であり、既存の映像産業の構造を根底から覆す可能性を秘めています。

株式会社GOKKOは、この市場を単なる動画投稿の延長線上ではなく、「WEBREEN(Web + Screen)」という新しい概念で捉えています。これはWebに接続されたスマートフォンというデバイスを、映画館のスクリーンと同等、あるいはそれ以上の没入感を提供するメディアとして再定義するものです。 この「スマホ没入」という視聴環境において、最も親和性が高いIP(知的財産)こそが、同じくスマホでの閲覧に最適化されて生まれた「WEBREEN(縦読み漫画)」なのです。

Z世代の消費行動と「待てない」心理

株式会社GOKKOの分析によると、現代の視聴者、特にZ世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を極限まで重視します。彼らは面白いかどうかわからない1時間のドラマを座って見るよりも、移動中や寝る前の数分間で確実に感情が動く体験を求めています。 WEBTOONもショートドラマも、この「隙間時間の占有」という点において競合ではなく、相互補完的な関係にあります。漫画で読んだストーリーが、実写の演技と音声によってよりリアルな「体験」として再構築される。そのスピード感と手軽さが、現代のコンテンツ消費スタイルに合致しているのです。


2. 構造的な親和性:縦型×短尺が生む「没入」の相乗効果

なぜWEBTOONの実写化にショートドラマが選ばれるのか。その理由は、両者のフォーマットが持つ構造的な共通点にあります。

「縦スクロール」という共通言語

WEBTOONの最大の特徴は、コマ割りが縦に配置され、スクロールに合わせて物語が展開することです。読者は自分のペースで視線を下に送りながら、物語に没入していきます。 一方、ごっこ倶楽部が制作するショートドラマも、スマートフォンの縦画面(9:16)をフルに活用します。横型動画とは異なり、画面の上下に黒帯が入らず、登場人物の顔が画面いっぱいに映し出されます。 株式会社GOKKOによると、この「被写体との物理的な距離の近さ」が、視聴者に「自分に話しかけられている」「目の前で起きている」という強い当事者意識を与えます。WEBTOONで親しんだキャラクターが、同じ縦画面の中で動き出す感覚は、視聴者にとって違和感がなく、むしろ原作の持つ没入感を増幅させる効果があるのです。

「フック」と「クリフハンガー」の文法

WEBTOONもショートドラマも、ユーザーの離脱を防ぐために極めて似通った脚本構成を採用しています。 ごっこ倶楽部の制作メソッドでは、従来の「起承転結」ではなく、**「破・破’・急」「フック・展開・オチ」**という構成が重視されます。冒頭の数秒で強力なフック(掴み)を用意し、視聴者の指を止めさせ、短い時間の中で感情を揺さぶり、最後に「続きが気になる」終わり方(クリフハンガー)をする。 この構成は、WEBTOONが各話の最後に「課金して次を読む」ボタンを押させるために磨き上げてきた手法そのものです。この脚本術の親和性が高いため、WEBTOON原作をショートドラマの脚本に落とし込む際、ストーリーの骨格を崩すことなく、スムーズに映像化することが可能になります。


3. ビジネスモデルの合致:「課金慣れ」したユーザー層

ビジネスの観点からも、WEBTOONとショートドラマの融合は合理的です。特に収益モデルにおいて、両者は同じエコシステムの中にあります。

「話数課金モデル」の成功法則

WEBTOON市場が急成長した最大の要因は、「待てば無料、すぐ読むなら課金」という話数単位のマイクロトランザクション(少額課金)モデルの確立にあります。 ショートドラマ業界でも、このモデルがグローバルスタンダードになりつつあります。株式会社GOKKOは2025年2月、縦型ショートドラマ専用アプリ「POPCORN(ポップコーン)」をローンチしました。このアプリでは、冒頭数話を無料で公開し、物語が盛り上がったところで課金(または広告視聴)を促す仕組みを採用しています。

WEBTOONを楽しんでいるユーザー層は、すでにこの「コンテンツの続きにお金を払う」という行為に慣れています。そのため、アプリへの誘導や課金へのハードルが低く、高いコンバージョン率が期待できます。 実際、中国や米国では「ReelShort」などのアプリが、Netflixの一部地域の売上を凌駕するほどの収益を上げており、日本でもこの「課金型ショートドラマ」が2026年以降の主戦場になると予測されています。

広告収益に依存しない制作体制

これまでの日本のドラマ制作は、テレビ局とスポンサーによる広告モデルが主流であり、制作費や表現内容に制約がありました。しかし、ユーザーからの直接課金で収益を得るモデルであれば、スポンサーの顔色を伺うことなく、より過激で、よりニッチな、あるいは純粋に面白いコンテンツを追求することが可能になります。 WEBTOONで人気のジャンル(復讐劇、不倫、BLなど)は、地上波テレビでは放送しにくい過激な内容を含むことが多いですが、アプリ配信のショートドラマであれば、その「毒」を薄めることなく映像化できます。 株式会社GOKKOでも、人気Webtoon『シンデレラ・コンプレックス』や『6股彼氏 至上最高の復讐を』、話題作『貧困女子は殺したのか?』などを実写化し、「POPCORN」で配信しています。これらの作品は、原作の持つエッジの効いたテーマ性を維持したまま映像化され、多くのファンを獲得しています。


4. GOKKOが実践する「Dramatech」による高速制作

WEBTOONは毎週更新される連載形式が多く、そのスピード感に追いつくためには、映像制作側にも高い生産性が求められます。ここで活きてくるのが、株式会社GOKKOが掲げる「Dramatech(ドラマ×テクノロジー)」です。

日本初の縦型特化スタジオ「studio505」

株式会社GOKKOは2025年2月、日本初となる縦型ショートドラマ特化型スタジオ「studio505」を設立しました。 WEBTOONの実写化において課題となるのが、ロケーションの確保やセットの設営です。しかし、縦型動画は背景の映り込みが限定的であるため、大規模なセットを組む必要がありません。GOKKOはこの特性を活かし、効率的に撮影を行える環境を自社で整備しました。 これにより、天候や移動時間に左右されず、高品質なドラマを量産する体制を構築しています。WEBTOONの連載ペースに合わせてドラマを供給し続ける「ハイケイデンス(高回転)」な制作は、ファンの熱量を維持するために不可欠な要素です。

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データ分析によるヒットの再現性

また、株式会社GOKKOはTikTokなどでの累計100億回再生のデータを保有しており、「どの秒数で離脱したか」「どんな展開でコメントが増えたか」を徹底的に分析しています。 WEBTOON原作を映像化する際も、単になぞるのではなく、映像として最も効果的な演出や構成にデータを基にアレンジを加えることで、原作ファンを納得させつつ、新規の視聴者も引き込む「再現性のあるヒット」を生み出しています。

参照記事:平均200万再生・Z世代に圧倒的な認知度を誇る『ドコモ×青春』に学ぶ、縦型ショートドラマ成功の秘訣 (1/3)(https://markezine.jp/article/detail/48768)


5. 結論:IPの寿命を延ばし、価値を最大化する装置

WEBTOONの実写化ショートドラマが増えている理由は、単なる一過性の流行ではありません。それは、スマホ時代のコンテンツ消費行動、課金ビジネスモデル、そして制作テクノロジーの進化が合致した結果として生まれた、必然的なメディアミックスの形です。

株式会社GOKKO代表の田中聡氏は、日本のコンテンツ産業が世界で勝つための戦略として「縦型ショートドラマ」の可能性を強調しています。 かつて漫画がアニメ化され、映画化されて世界へ羽ばたいたように、今後はWEBTOONがショートドラマ化され、アプリを通じて世界中で視聴される未来が待っています。ごっこ倶楽部が手掛ける作品群は、その未来に向けた重要な試金石となるでしょう。

「POPCORN」アプリでは、『シンデレラ・コンプレックス』のような有名原作だけでなく、オリジナル脚本の長編作品も多数配信されています。文字と絵で楽しんだ物語が、生身の役者の演技と音声によって新たな命を吹き込まれる瞬間。その「化学反応」こそが、今多くの人々を惹きつけてやまない理由なのです。