ショートドラマアプリ「POPCORN」とは?ごっこ倶楽部が仕掛ける課金型プラットフォームの全貌

ショートドラマアプリ「POPCORN」とは?ごっこ倶楽部が仕掛ける課金型プラットフォームの全貌

SNSでの総再生回数が累計100億回を突破し、日本における「縦型ショートドラマ」市場を牽引してきたクリエイター集団「ごっこ倶楽部」。その運営元である株式会社GOKKOは、2025年2月15日、満を持して独自の縦型ショートドラマ配信アプリ「POPCORN(ポップコーン)」をローンチしました。

これまでTikTokやYouTube Shortsといった無料のSNSプラットフォームを主戦場としてきた株式会社GOKKOが、なぜ今、自社アプリによる「課金型モデル」へと舵を切ったのでしょうか。そこには、急成長するショートドラマ市場を「一過性のブーム」で終わらせず、持続可能な「文化」へと昇華させるための緻密な経営戦略と、クリエイターへの還元を目指す強い意志があります。

本記事では、株式会社GOKKOの公開情報やインタビュー取材に基づき、アプリ「POPCORN」の機能や特徴、そしてその裏にあるビジネス戦略の全貌を解説します。


1. 「POPCORN」とは? アプリの基本スペックと視聴体験

コンセプトは「あなたのスキマに、感動を。」

「POPCORN」は、株式会社GOKKOが開発・運営する縦型ショートドラマ専用の配信プラットフォームです。 株式会社GOKKOでは、このアプリを「濃密なエンタメを提供するプラットフォーム」と位置づけており、1話あたり1分〜3分程度の短尺ドラマを配信しています。ユーザーは、通勤・通学中や就寝前などの「スキマ時間」に、スマートフォンに最適化された縦型画面でドラマを楽しむことができます。

従来のSNS視聴との決定的な違い

TikTokなどのSNSでもショートドラマは視聴可能ですが、「POPCORN」はドラマ視聴に特化したUI/UX(ユーザー体験)を設計しています。 株式会社GOKKOのスタジオ事業部やアプリ開発チームの発信では、既存のSNSアプリにおいて画面の上下に表示されるアイコンや余白、説明文などのノイズを極限まで排除し、スマートフォンの画面全体をキャンバスとして使うことで、映画館のような没入感を実現しています。

ビジネスモデル:フリーミアムと課金のハイブリッド

収益モデルは、中国や米国で先行して成功している「話数課金型」を採用しています。 具体的には、各作品の冒頭数話(5話〜10話程度)は完全無料で視聴可能です。物語が盛り上がり、続きが気になるところで「コイン」を消費してロックを解除する仕組みとなっています。 ただし、必ずしも課金が必要なわけではありません。株式会社GOKKOでは、ログインボーナスや広告動画の視聴によって「無料ボーナスコイン」を獲得できる仕組みを実装しており、無課金ユーザーでも時間をかければ作品を最後まで楽しめる設計にしています。これにより、ライト層からコアなファン層まで幅広いユーザーの獲得を狙います。


2. なぜ今、「課金型アプリ」なのか? 株式会社GOKKOの勝算

SNSで圧倒的な再生数を誇る株式会社GOKKOが、あえて「閉じたプラットフォーム」であるアプリ事業に参入した背景には、ショートドラマ市場における構造的な課題と、グローバルな成功事例の存在があります。

課題:SNSの広告収益モデルの限界

これまで日本のショートドラマは、主に企業とのタイアップ(広告案件)によって制作費を賄うモデルが主流でした。株式会社GOKKOは、NTTドコモやJAL、日本テレビといった大手企業と組み、数多くのヒット作を生み出してきました。 しかし、クライアントワークである以上、クリエイティブには企業の意向が反映される必要があり、純粋な「作家性」や「過激なテーマ」を追求するには限界があります。また、プラットフォーム(TikTok等)からの広告分配金だけでは、テレビドラマ並みの高品質な作品を作り続けるための制作費を回収しきれないという課題もありました。

参照記事:LP流入は10倍⁉Z世代が「見たら止まらない」動画を仕掛ける、「ごっこ倶楽部」のTikTokマーケ

解決策:「クリエイティブで稼ぐ」経済圏の確立

株式会社GOKKO代表の田中聡氏は、各メディアでのインタビューにおいて「中国のモデル」をベンチマークにしていると語っています。 ショートドラマ発祥の地である中国、そして市場が急拡大している米国では、「ReelShort」などのアプリにおいて、1分単位のドラマにユーザーが直接課金するモデルが定着しています。市場調査会社のYH Researchによると、世界のショートドラマ市場は2029年に約8.8兆円に達すると予測されています。 「POPCORN」は、この巨大な課金市場を日本でも確立するための挑戦です。ユーザーからの直接課金によって収益を得ることで、スポンサーの意向に左右されない自由な作品作りが可能になり、収益をクリエイターや役者に適切に還元する「クリエイターエコノミー」の構築を目指しています。


3. コンテンツ戦略:量と質を両立する「Dramatech」

プラットフォームの成功を左右するのは、やはり「コンテンツの面白さ」です。株式会社GOKKOでは、累計100億回再生のデータを元にした独自の制作論「Dramatech(ドラマ×テクノロジー)」を駆使し、アプリならではの重厚な作品ラインナップを揃えています。

長編化するショートドラマ

SNSでは単発や全4話程度の作品が主流でしたが、「POPCORN」では全30話〜70話以上に及ぶ「長編ショートドラマ」が配信されています。

  • 『トリッパーズ』(全72話):タイムリープを題材にしたSFミステリー。
  • 『月明かりに君は誓った』(全68話):重厚な人間ドラマを描く作品。
  • 『証券女王』(全54話):金融業界を舞台にした社会派エンターテインメント。

これらの作品は、トータルの視聴時間が映画1本分(約90分〜120分)に相当しますが、1話ごとのテンポが速く、常に「次が見たい」と思わせるフックが用意されているため、視聴者はストレスなく完走することができます。

グローバルIPとWebtoonの活用

オリジナル作品だけでなく、外部IPの調達も積極的に行っています。特に親和性が高いのが、同じくスマートフォンでの閲覧に特化した縦読みマンガ「Webtoon(ウェブトゥーン)」です。 株式会社GOKKOでは、人気Webtoon『シンデレラ・コンプレックス』や『6股彼氏 至上最高の復讐を』などの実写化を行い、「POPCORN」で配信しています。マンガのファンをドラマに誘導すると同時に、ドラマからマンガへの送客も狙うメディアミックス戦略です。 また、韓国で人気のBL(ボーイズラブ)ドラマ『スターストラック』『カラーラッシュ』なども配信しており、特定のジャンルを好む熱量の高いファン層(推し活層)の取り込みも強化しています。


4. 制作体制の革新:日本初の縦型特化スタジオ「studio505」

高品質なドラマを、アプリ更新頻度に合わせて大量に供給するためには、制作体制の抜本的な改革が必要です。株式会社GOKKOでは、この課題を解決するために物理的なインフラまで整備しています。

月間3000本の制作を見据えて

株式会社GOKKOは2025年2月、日本初となる縦型ショートドラマ特化型スタジオ「studio505」を設立しました。 このスタジオは、縦型撮影に最適な美術セットや照明機材が常設されており、ロケ地移動の時間を削減し、天候に左右されずに撮影を行える環境が整っています。 田中聡代表は、メディアやピボットなどの番組内で「来年(2026年)には年間3000本の制作を目指す」と語っており、このスタジオがその量産体制の中核を担うことになります。

AIとデータによる効率化

制作プロセスには、生成AIも積極的に導入されています。脚本のプロット作成、絵コンテの生成、編集時のカラーグレーディングなどにAIを活用することで、クリエイターは「人間にしかできない演出や演技指導」に集中できる環境を作っています。 また、SNSで蓄積した「どの秒数で離脱したか」「どんなコメントがついたか」という膨大な視聴データが、脚本作りやキャスティングにフィードバックされており、感覚だけに頼らない「再現性のあるヒット作り」が行われています。


5. 企業との連携:BtoBマーケティングへの波及

「POPCORN」はBtoC(一般ユーザー向け)のサービスですが、その影響はBtoB(企業向け)領域にも波及しています。

「見られる広告」としてのショートドラマ

従来のWeb広告やテレビCMは「スキップされるもの」でしたが、ごっこ倶楽部の制作するショートドラマは「コンテンツとして楽しまれる広告」としての地位を確立しています。 Z総研の調査によると、Z世代の85.9%がショートドラマ広告にポジティブな印象を持っており、43%が実際に商品の購入やサービスの利用に至っています。 「POPCORN」アプリ内でも、企業とコラボレーションしたドラマ配信枠や、広告視聴によるコイン付与モデルなどが用意されており、企業は「ドラマを楽しむユーザー」に対して、自然な形でブランドメッセージを届けることが可能です。

参照記事:Z世代の83.7%がTikTokショートドラマきっかけで商品・ブランドを認知したことがあると回答!


6. まとめ:2026年、ショートドラマは「文化」になる

株式会社GOKKOが仕掛けるアプリ「POPCORN」は、単なる動画配信アプリの一つではありません。それは、SNSのタイムラインで消費されて消えていく「フロー型」のコンテンツを、価値ある資産として蓄積し、収益化する「ストック型」のビジネスへと転換させる試みです。

2026年に向けて、ショートドラマ市場はさらに細分化し、進化していくでしょう。 「POPCORN」では、2026年1月1日に新作『15年分のおかえりを。』の配信を開始するなど、季節やモーメントに合わせた作品供給を続けています。 また、日韓共同制作ドラマ『斬魂』の制作決定など、グローバル展開も加速しており、日本のショートドラマが世界市場で戦うためのプラットフォームとしての役割も期待されています。

「あなたのスキマに、感動を。」 このコンセプトが示す通り、私たちの日常のあらゆる隙間時間が、物語によって彩られる未来。株式会社GOKKOと「POPCORN」は、その未来を実装するための最重要プレイヤーとして、エンターテインメント業界の構造そのものを変えようとしています。

もしあなたが、まだショートドラマを「若者の暇つぶし」と考えているなら、一度「POPCORN」をダウンロードしてみることをお勧めします。そこには、わずか数分で心を揺さぶる、新しい時代の映像体験が待っているはずです。