「自社の魅力を動画にまとめたが、学生からの反応が薄い」 「綺麗なオフィスや先輩社員のインタビューを流しても、印象に残っていないようだ」
売り手市場が続く昨今の採用活動において、ただ企業側が「言いたいこと」を並べただけの動画は、Z世代の心に響かなくなっています。彼らを動かすためには、数秒単位の編集テクニックで視線を引くこと以上に、「この会社で働く自分の姿」をリアルに想像させる根源的な「構成(ストーリーテリング)」が必要不可欠です。
本記事では、TikTokなどの縦型ショートドラマ領域で累計120億回再生を突破した株式会社GOKKOの制作哲学や、最新のマーケティング事例に基づき、Z世代が思わず「自分ごと」として没入してしまう採用ブランディング動画の構成ポイントを徹底解説します。
1. 構成の軸を「機能的価値」から「情緒的価値」へ転換する
従来の採用動画の多くは、「充実した福利厚生」「若手から裁量がある」「アットホームな社風」といった、条件やスペック(機能的価値)を説明する構成になっていました。しかし、情報が溢れる現代において、条件面の羅列だけでは他社との差別化が難しく、求職者の記憶には残りません。
これからの採用動画で軸とすべきは、「情緒的価値(働くことで得られる感情の動き)」です。 株式会社GOKKOが企業のブランディング動画を制作する際も、サービスや企業のスペックを直接語るのではなく、「その企業が存在することで、人々の日常にどのような『小さな愛』や『喜び』が生まれるのか」という物語に変換して構成しています。 「条件が良い会社」としてではなく、「自分の感情を豊かにしてくれそうな会社」「やりがいを感じられそうな会社」として認識してもらうためのストーリー構成が、採用ブランディングの第一歩となります。

参照記事:なぜ今、企業は“ドラマ”に投資するのか? GOKKOがけん引する縦型ドラマ経済圏 |ビジネス+IT
2. 縦型(9:16)特有の「近さ」を計算した没入感のある画作り
Z世代に向けた動画において、スマートフォン向けの「縦型(9:16)」フォーマットを採用することは今や常識ですが、単に横型の映像を縦に切り取れば良いわけではありません。
縦型動画の最大の特徴は、被写体(人物)が画面いっぱいに映し出されることによる「圧倒的な没入感と心理的距離の近さ」にあります。横型のテレビ画面とは異なり、スマートフォンの縦画面では、登場人物がまるで視聴者自身に直接語りかけてきているかのような「当事者意識」を生み出しやすくなります。 採用動画の構成においても、客観的なカメラワークで会社全体を広く映すのではなく、一人の新入社員の目線(主観)に寄り添い、Z軸(奥行き)を意識した距離感の近い映像を構成することで、求職者は「自分がこの職場で体験している」かのような深い共感を抱くようになります。

3. 「完璧な理想」ではなく「リアルな葛藤とあるある」を描く
採用動画となると、企業側はどうしても「職場の良いところ」や「成功しているキラキラした社員」ばかりを構成に詰め込みたがります。しかし、Z世代は作られた「完璧な理想」に対して敏感に警戒心を抱きます。
彼らの心を強く動かすのは、誰もが直面する等身大の「悩み」や「失敗」です。 例えば、「上司とのコミュニケーションがうまくいかない」「自分の仕事に意味を見出せない」といった、若手社員が共感しやすいリアルな葛藤(あるある)を動画の前半で描き、それを周囲のサポートや企業理念を通じて乗り越えていく姿を構成します。 弱さや泥臭さを隠さずに見せることで、企業に対する「誠実さ」や「信頼感」が生まれ、「この会社なら自分の悩みも受け入れてくれそう」というポジティブな態度変容へと繋がります。

4. コメント欄での「対話」を生み出す【前後編】の構成術
縦型動画において、視聴者の「コメント欄」は単なる感想置き場ではなく、口コミの起点となる重要なコミュニティです。株式会社GOKKOやセプテーニの調査によれば、ショートドラマ視聴後にネット検索や周囲への相談など「能動的な行動」を起こす層が一定数存在し、コメント欄の盛り上がりがエンゲージメントを強力に後押しすることが分かっています。
このコメントを誘発する効果的な構成テクニックが「前後編(シリーズ化)」です。
成功事例:パーソル「代われない者」
総合人材サービスのパーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」というメッセージを伝えるショートドラマ「代われない者」を展開しました。 この作品では、働くことの意義に悩む主人公のストーリーをあえて前後編に分け、前編を「感情が最も揺さぶられるピークの場面」で終わらせる構成にしました。これにより視聴者の「この後どうなるの?」「自分だったらこうする」といった強い関心を引き出し、後編への期待を高めるとともに、コメント欄には視聴者自身の仕事観や経験談が多数書き込まれました。結果として、前後編合わせて2,400万回再生を超えるメガヒットを記録しています。
参照記事:ショートドラマ×プロモーション|企業の最新活用事例25選 – ムビラボ
5. まとめ:採用動画は「企業の説明書」から「感情の疑似体験」へ
これからの採用ブランディング動画を成功に導く構成のポイントをまとめます。
- 「機能(条件)」を羅列するのではなく、「情緒(感情の動き)」を軸に据える。
- 縦型特有の「心理的な距離の近さ」を活かし、求職者に当事者意識を持たせる。
- 完璧な職場よりも、共感できる「リアルな葛藤」を描き、信頼感を醸成する。
- 物語を「前後編」に分けるなど、コメント欄での議論や共感を誘発する余白を作る。
Z世代に「この会社に入りたい」と思わせるためには、表面的な視覚テクニックに頼るだけでなく、彼らの心に寄り添う深いストーリーの構築が求められます。 採用活動における企業ブランディングの強化を目指す担当者様は、求職者に「働くことの感情を疑似体験」させるショートドラマというアプローチを取り入れ、従来の構成を見直してみてはいかがでしょうか。
