広告の未来はどうなる?“広告離れ”時代の5つの構造変化と企業の打ち手

広告の未来はどうなる?“広告離れ”時代の5つの構造変化と企業の打ち手

「広告の未来はどうなるのか」——広告に携わる人なら、一度は考えたことがあるはずです。生活者の広告離れ、縦型ショート動画の台頭、AIによる制作・配信の自動化。変化の要素は多いものの、バラバラに語られることが多く、全体像がつかみにくいのが実情です。この記事では、広告の未来を形づくる5つの構造変化を、検証可能なデータと事例で整理し、いま企業が打てる手までまとめます。

出発点:広告は「スキップされる前提」の時代になった

未来を考える出発点は、いまの生活者がどれだけ広告を避けているかという現実です。従来型の動画広告は96.5%がスキップされるとも報告されています(出典:MarkeZine・2025年4月)。「広告業界のこれからは?」という問いへの答えを難しくしているのは、テクノロジーの変化そのものではなく、「広告を見たくない」という生活者の本音が数字として突きつけられていることです。

つまり広告の未来とは、「どう見せるか」の進化ではなく、「どうすれば見たいと思ってもらえるか」への転換です。この視点で、5つの構造変化を見ていきます。

広告の未来を形づくる5つの構造変化(見たい広告へ・縦型ショート・コンテンツ型・AI自動化・視聴の質)を整理した図解
広告の未来を形づくる5つの構造変化

広告の未来を形づくる5つの構造変化

変化① 「見せる広告」から「見たい広告」へ

96.5%がスキップされる時代に、露出量で押し切る発想は成立しにくくなっています。代わりに伸びているのが、広告自体がコンテンツとして楽しめる「見たい広告」です。エンタメとして続きが気になる、共感して自分から「いいね」を押す——広告とコンテンツの境界が溶けていくのが、最初の構造変化です。

従来型動画広告は96.5%がスキップされる現実から「見たい広告」への転換を表した対比イメージ
「スキップされる広告」から「見たい広告」へ(従来型動画広告のスキップ率はMarkeZine報告より)

変化② 主戦場は縦型ショート動画へ

動画を見る場所はテレビからスマホへ移り、持ち替えずに見られる縦型(9:16)がスマホ時代の基準フォーマットになりました。TikTok・YouTube・Instagramがショート枠を主戦場にし、テレビ局や制作会社も縦型コンテンツ制作に参入しています。広告も同じ場所に行くしかない——これは選択ではなく前提です。縦型フォーマットの基礎は「縦型ショートコンテンツとは」で詳しく解説しています。

変化③ 「広告らしくない広告」=コンテンツ型広告の主流化

①と②が交わる場所に生まれたのが、ショートドラマをはじめとするコンテンツ型広告です。検証可能な数値が公開されている事例を2つ挙げます。

NTTドコモは、Z世代への認知を課題に縦型ショートドラマ「ドコモ×青春」シリーズを展開。平均200万再生、フォロワー38万人超、累計いいね1,700万以上を記録し、Z世代の2人に1人が公式アカウントを認知するまでに至っています(出典:MarkeZine)。

JALは、久米島への旅行需要喚起を目的に縦型ショートドラマを公開し、1ヶ月で1,000万回再生・コメント2,700件超、久米島行き航空券の予約数270%以上増という事業成果につなげました(出典:Web担当者Forum)。

どちらも「広告を見てもらう」のではなく、「コンテンツとして楽しまれた結果、ブランドが残る」構造です。手法の詳細は「ショートドラマ広告とは」にまとめています。

変化④ AIが「作る・配る・測る」を自動化する

生成AIによるクリエイティブ制作の高速化、配信・最適化の自動化は、広告運用の前提を変えつつあります。重要なのは、AIによって「大量に作って出し分ける」ことのハードルが下がるほど、1本1本の企画の質と「見たいと思わせる力」が差別化要因になるということです。制作の自動化が進むほど、変化①〜③で見た「コンテンツの力」の価値はむしろ上がります。

変化⑤ 指標が「露出」から「視聴の質」へ

スキップされる前提の世界では、表示回数だけでは成果を語れません。完視聴率・エンゲージメント・その後の行動(検索・来訪・予約)など、「どれだけちゃんと見られ、心が動いたか」を測る指標へ重心が移っていきます。指標設計の実務は「ショート動画広告の効果測定・KPI設計ガイド」で解説しています。

いま企業が打てる3つの手

広告の未来に向けて企業が打てる3つの手(見たくなる企画から考える・縦型ショートを小さく実験・視聴の質を測る)の図解
いま企業が打てる3つの手

① 「広告枠」ではなく「見たくなる企画」から考える

どこに出すかより先に、「誰が、なぜこれを最後まで見るのか」を設計します。ドコモ・JALの事例に共通するのは、商品説明ではなく物語や感情を起点にした企画だということです。

② 縦型ショートを「実験できる規模」で始める

縦型ショート動画は、少数の本数から始めて反応を見ながら育てられるのが強みです。最初から大規模に張るのではなく、企画の仮説→短いサイクルでの検証を回せる体制をつくることが、未来への一番現実的な備えになります。

③ 「視聴の質」を測る指標を先にそろえる

完視聴率・保存・コメントの質・指名検索の変化など、露出以外の指標を最初からダッシュボードに入れておくこと。測る物差しが変わらないと、企画も変わりません。

広告の未来に関するよくある質問

Q. 広告業界はなくなってしまうのですか?

なくなるのではなく、形が変わると考えるのが実態に近いでしょう。「見たくない広告」への支出が縮む一方で、コンテンツ型広告や縦型ショート動画のように生活者が自分から見に来る形式への投資は伸びています。問われているのは広告の存在ではなく、広告の作り方です。

Q. 中小企業はまず何から始めるべきですか?

いきなり大型のタイアップを狙うより、自社アカウントでの縦型ショート動画の継続発信から始めるのが現実的です。反応データが蓄積されるほど、その後の広告投資の精度が上がります。作り方の基本は「バズる動画の作り方」も参考にしてください。

Q. 今年のトレンドを具体的に知りたい場合は?

この記事は5〜10年単位の構造変化を扱っています。直近1年の具体的な手法・媒体のトレンドは「広告業界のトレンドと課題」と「動画広告のトレンド予測」で解説しています。

まとめ:広告の未来は「見たい」をつくれるかで決まる

広告の未来を形づくるのは、①「見たい広告」への転換、②縦型ショート動画への主戦場の移動、③コンテンツ型広告の主流化、④AIによる自動化、⑤指標の再定義——という5つの構造変化です。技術がどれだけ進んでも、核にあるのは「生活者は見たいものしか見ない」というシンプルな事実。スキップされない企画をつくれる企業から、次の時代の広告の主役になっていきます。